サテュロス、パーン、牧神、牧羊神、半獣神、ほか

サテュロスやパーンの事典のようなブログにしたいと思っています

サテュロスとは(Theoi Projectより)

Theoi Project内のサテュロスのページのENCYCROPEDIA部分までの訳です(あんまり自信無し)。

それより下には叙事詩などにおけるサテュロスの描写の引用が続いてますが、気が向いたら訳します……

 

出典

SATYRS (Satyroi) - Fertility Spirits of Greek Mythology (Roman Fauns)

(2022/05/14閲覧)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

サテュロス、サテュロイ

 

 「サテュロイ」(サテュロス)は武骨な山野の精霊である。

ニンフの恋人で、ディオニュソス、ヘルメス、ヘパイストス、パーン、キュベレー、ガイアの眷属とされる。

 サテュロイの姿は、ロバの耳、低い鼻、後退した生え際、馬の尻尾、そして勃起した男根をもって描写される。彼らはディオニュソスの眷属として、酒を飲み、踊り、笛を吹き、マイナデスとたわむれている。

 サテュロイのなかでも特定の種族として、パネス(ヤギ脚のサテュロス)、シレノイ(老いたサテュロス)、サテュリスコイ(子どものサテュロス)、ティテュロイ(笛を吹くサテュロス)がある。

 ディオニュソスの祭りにおいて、コロスの俳優がサテュロスに扮して演ずるサテュロス劇が上演された。

 

サテュロスの親(諸説)

・ヘカテリス(ダンスするニンフ)

・ヘカテリスとダクテュロス(幼少期のゼウスをクレタで保護した精霊)

・ヘルメスかシレノスかパーンとオリアス(山のニンフ)

 

名前がついているサテュロス一覧

・アムペロス(ディオニュソスに愛され死後ブドウとなったサテュロスの少年)

アリスタイオス(牧羊、狩猟、養蜂の神でサテュロスっぽい)

・アストライオス(半神で牧羊を司る老いたシレノス)

・ケルコペス(猿っぽいふたりの強盗、たぶんサテュロス

・コモス(半神で宴会を司る少年サテュロスディオニュソスのお酌担当)

・クロトス(ヘリコン山のサテュロス、ムーサイに讃えられて射手座として音楽を奏でた)

・レナイ(ディオニュソスのお供としてワインを作るサテュロス、たぶんシレノス)

・マルシュアス(フリギアのトモロス山のサテュロス、笛の巧さでアポロンの怒りを買った)

・ペレスポンドス、リュコス、プロノモス(アルカディアサテュロスでヘルメスとディオニュソスの原型な神の息子たち)

・ポイメニオス、シアソス、ヒプシケロス、オレステス、プレグライオス、ナパイオス、ゲモン、リュコン、ペレウス、ペトライオス、ラミス、レノビオス、スキルトス、オイストロス(ディオニュソスのインド遠征にお供した14人のサテュロス戦士たち)

・リビュエのサテュロス(北西アフリカのアトラス山にいると信じられていたサテュロス(たぶんおさる))

・島のサテュロス(アフリカのどこぞの島にいると信じられていたサテュロス

エチオピアサテュロス(ティアナのアポロニウスによってしずめられた暴力的なサテュロス

アルゴスサテュロス(ダナオス王の娘アミュモネに暴行をはたらいた、レルネ湖のそばにいたサテュロス

・レムノスのサテュロス(レムノス島の女子とつるんでたサテュロス

・シレノイ(ディオニュソスの眷属の3人の老いたサテュロス、名はマロン、レネウス、アストライオス)

・シレノス(ディオニュソスの養育をした酔っ払いじいさんサテュロス

・ティテュロイ(ディオニュソスに従う笛吹きのサテュロス

 

事典的解説

 サテュロスギリシャ神話に登場する一種族。ディオニュソスとは切っても切り離せない関係があり、大いなる自然の力をそなえている。彼らはヤギかヒツジに似ているが、そこから古代の人々は「サテュロス」という言葉が「ティテュロス(ヒツジ)」と同じものと考えた。(テオクリトス)

 ホメロスサテュロスについては言及していないが、ヘシオドスは彼らについて、怠惰で無用の種族と評した。彼はサテュロス(とニンフとクレテス)についてヘカタイオスとポロネウスの娘のさらに娘が産んだとしたが、より一般的な説明だと、サテュロスは「ヘルメスとイプシマの息子たち(ノンノスのディオニュシアカ)、「ヘルメスとナイアスの息子たち(クセノポンの饗宴)」、「シレノスの息子たち(エウリピデスサイクロプス)」である。

 文献で描写されるサテュロスの姿は、いくらかバリエーションはあれど、強靭で粗野というものである。そのほか、ごわごわした毛、まるくて上を向いた鼻、動物のようにとがった耳、小さな角(もしくは角のような突起)、馬かヤギのような小さな尻尾、などの特徴が加えられる。

 芸術作品の中において彼らは、さまざまな年代の姿が登場する。年老いたものはシレノス(パウサニアス)、逆に若いものはサテュリスコイ(テオクリトス)である。

 すべてのサテュロスディオニュソスに従っている。(アポロドーロス)ワインを好み、酒瓶やテュルソスを手に登場することもある。また彼らは肉体的なあらゆる快楽を好み、眠り、音楽を奏で、官能的なダンスをニンフたちとともに踊る。(アポロドーロス、ホラティウス

 山野に暮らすすべての神と同じく、彼らは死すべき運命をひどくおそれる。(テオクリトス)

 後年の作家たち、特にローマ時代の詩人たちは、サテュロスとパーンとイタリアのフォーンを混同した。それにより彼らは、より大きな角、より広範囲のヤギの脚を与えられた。しかし元々彼らは全く異なる神格である。

 サテュロスは基本的に、笛、テュルソス、パンフルート、牧杖、ワインで満たされた酒壺を手に表される。また彼らは動物の皮やブドウ(もしくはキヅタ)の冠をまとっている。

 サテュロスの容姿はさまざまなものがあるが、最も有名なものはプラクシテレスによる彫刻であった。(パウサニアス)

(Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちょっと註

 

・途中に出てきた「ティテュロス」というのは、アイリアノスの「ギリシア奇談集」において「「卑猥な歌」を意味する「テレティスマ」から転じた」という記述があった覚えがあります。もっとも訳註にて俗説だろうとツッコミが入っていましたが。

 

・「インド遠征」というのはノンノスの「ディオニュソス譚」に詳しい物語です。邦訳が無くて長いので未読……

 

・最後に出てきた「プラクシテレスによる彫刻」はおそらくこちら

 

パウサニアスは紀元後2世紀の人ですから、当時のサテュロスのイメージはこれだったのでしょう。

現在では脚が獣、ひざから下だけ獣、ヤギ獣人、などなど多様な姿のサテュロスがいます。