サテュロス、パーン、牧神、牧羊神、半獣神、ほか

サテュロスやパーンの事典のようなブログにしたいと思っています

西欧古代神話図像大鑑

カルターリ『西欧古代神話図像大鑑』(ヴィンチェンツォ・カルターリ著、大橋喜之訳、八坂書房、2012年)をご紹介します。

 

最初の最初に『古人たちの神々の姿とその変容』として出版されたのは1556年のようです。それに図版が追加されたものが1571年。こちらの邦訳は2012年が初版です。

 

 

帯文を引用しますと「ルネサンス以降の芸術家たちに霊感を吹き込んだ伝説の書」とのこと。

けっこう著者の解釈が入っているので「原典」みたいに扱うのは危険そうですが、ルネサンス時代の人々にはこういう形でもってローマ(ギリシャ)神話が理解されたのかな〜と思っておくくらいがいい本でしょうか。引用はたくさんされているので、読書案内に便利です。

あと図が多くてとてもかわいいです。ルネサンス期の絵の、上手くもないが素朴と言い切るにはやや洗練されている中途半端な雰囲気は良いですね。

事典的な本なので通読には向きません。気になる神々をそのときどきで引いて読む感じです。

 

1章ずつ、15章にわたってローマ神話の主要な神々が紹介されていて、一見するとその中にはパーンもサテュロスもいないようです。

しかし実は第4章「ユピテル」にパーンとサテュロスの記述が入っているのです。「ユピテル」全体のだいたい3分の1くらいがパーンとサテュロスに割かれています。もうパーンとサテュロスだけで1章作ればよかったのでは?(実際パーンだけで1章作る予定だった痕跡は見られるらしい)

 

パーンとサテュロスの解説の導入は「オルフェウス教におけるユピテルの姿ってなんかパーンみたいですよね。というわけでパーンの話します」という感じで始まっています。この本もオルフェウス教やストア派のパーンを牧神ととらえてる感じでしょうか。でもプルタルコスの「神託の衰微について」の話は出てこないなあ。

途中でやたら長いエコーの詩の引用がはさまったりもしますが、まあまあオーソドックスな、パーンはパニックの神とか、下半身は山羊とか、似たような神にファウヌスやシルヴァヌスやサテュロスがいるとかいった解説がされています。

パーンに関して2回くらい「パーンは顔が赤い」っていうのが出てくるのがなんかかわいい。パーンの顔が赤いのは赤が根源的な火のパワーやおひさまの色だからだそうです。かわいいっ

 

諸神讃歌や変身物語などのように取り沙汰されている印象は無い本ですが、読むとたのしいです。図を見てるだけでもたのしい。図書館やでかい本屋で見かけたら手に取ってみてください。