サテュロス、パーン、牧神、牧羊神、半獣神、ほか

サテュロスやパーンの事典のようなブログにしたいと思っています

人間嫌い

メナンドロスによる喜劇「人間嫌い」のご紹介です。

 

テキストは『ギリシア喜劇全集5』(訳者:西村太良、川上穣、吉武純夫、広川直幸、平山晃司、岩波書店、2009年)で読めます。

大きめの図書館に行けばあるかもしれないし無いかもしれない。

 

「人間嫌い」は紀元後3世紀後半〜4世紀初頭に執筆されたとされるギリシャ喜劇です。

あらすじをざっくり述べるなら「人間嫌いのおじいさんが娘の結婚を機になんやかんやあって今までの態度を改める」といったところ。

舞台はアッティカの田舎、ピュレーの村。パーン信仰が根付く地です。

舞台中央にはパーンの社が据えられ、物語はプロロゴス(前口上)をパーンが語るところから始まります。

むかし描いたプロロゴス部分の漫画

途中でコロスのパーン参拝者たちが歌い踊ったり、「パーンが夢に出てきたのでパーンにお参りに行かなければならない」といったセリフがあったり、どっちを向いてもパーンに満たされた劇となっています。

註や解説にも「アッティカにおけるパーン侵攻はマラトンの戦いがきっかけ(ヘロドトス)」だけでなく「アッティカにおけるパーンの社は常にニュムペーと合祀であった」「パーン信仰の担い手は都市の富裕層であった」など、神話の解説書ではなかなか見られない、パーン「信仰」に関する情報が盛りだくさんです。

38ページの註にはパーンに捧げられる供物の例が挙げられており、動物のほか「チーズ、ミルク、蜂蜜、パンケーキなどが祭壇に並べられた。」とのことです。

かわいい。

 

今となっては神話の登場人物としての存在感が強いパーンも、むかしは確かに「神」として生きていたのだなあ、と思われ、しみじみと嬉しい気分になります。

巻末には地図がついてるのも嬉しい。位置関係が想像しやすくなります。

見かけたらぜひ読んでみてください。(こればっか)