トルクァート・タッソによる牧歌劇「アミンタ」をご紹介します。
テキストは『愛神の戯れ』(トルクァート・タッソ著、鷲平京子訳、岩波書店、1987年)で読めます。
岩波文庫に強い感じの古本屋やデカめの古本市などに行けば見つかるんじゃないかと。
「アミンタ」は1573年に執筆された牧歌劇。「牧歌劇」なるものは、伝統的な田園詩に散文を混ぜてさらに上演できるようにしたもの……という認識で合ってるでしょうか。15世紀〜16世紀にイタリアで流行ったようです。
田園詩はアルカディアを舞台にしたものが多いので、牧神好きとしては押さえておいた方がいいのかな……としばらく思っていますがまだ手を出していません。
「アミンタ」のあらすじ。
美神ヴェーネレに対して反抗期な愛神アモーレくんが、ニンフのシルヴィアと牧人のアミンタに恋の矢を放っててんやわんやの大騒ぎ。
途中で我らがサテュロスが登場します。
矢も受けてないのにシルヴィアに想いを寄せ、「そうだ無理矢理襲っちゃえばいいじゃん」と最低な考えに至り、泉で水浴びをするシルヴィアに乱暴しようとします。
一番最悪なタイプのサテュロスですね。
第二幕の第一場はそんなサテュロスの独白で占められています。恋慕が憎しみになりマッチョイズムがそれを強化していく様が長々と語られます。怖いよ!そんな弱者男性みたいなサテュロス見たくなかったよ!
でも石を投げつけられてびっくりして逃げていきます。それ以降は出てきません。
終盤、第四幕と第五幕の間の幕間劇は我らがパーンによる独白のようです。
急に出てきてデウスエクスマキナのようなことを言ってそれ以降は出てきません。死ぬところだったアミンタをパーンが助けてくれたんですかね。
と、半獣成分に焦点を当てて読むとそんな感じでした。
「アミンタ」という劇の成立した時代や作者タッソの人物像や交流を詳しく頭に入れた上で読むとまた味わいが変わってくることでしょう。そのへんは巻末の解説にとても詳しく書かれています。