サテュロス、パーン、牧神、牧羊神、半獣神、ほか

サテュロスやパーンの事典のようなブログにしたいと思っています

ビリティスの歌

ピエール・ルイスによる詩集『ビリティスの歌』(ピエール・ルイス著、沓掛良彦訳、水声社、2003)をご紹介いたします。 原著"Chansons de Bilitis"は1894年発表。「"ビリティス"なる名の、サッポーと同時代(紀元前6世紀ごろ)の女性詩人による詩集をルイス…

牧神の午後(ハンス・クリストファー・ブーフ)

ハンス・クリストファー・ブーフによる小説「牧神の午後」(Nachmittag eines Fauns)をご紹介いたします。 テキストは『独逸怪奇小説集成』(前川道介訳、竹内節編、国書刊行会、2001)によりましたが、収録されている作品はだいぶなんなのかよくわからない作…

耳の聞こえぬ森の神サテュロス

ルベン・ダリオによる短編「耳の聞こえぬ森の神サテュロス」をご紹介いたします。 作者ルベン・ダリオはニカラグアの国民的詩人。「ラテンアメリカモダニズム文学の父」と呼ばれもするようです。詩人ですが散文や小説も数多く発表しています。 また意外な国…

サテュロス または 神にされた森の精

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテによる戯曲「サテュロス または 神にされた森の精(Satyros, oder der vergötterte Waldteufel)」をご紹介いたします。 ゲーテは言わずと知れたドイツの大作家です。代表作は『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』で…

踊るサテュロスとその来日

「踊るサテュロス(The Dancing Satyr of Mazara del Vallo)」と呼ばれる彫像のお話をいたしましょう。 今回の記事はおもに『特別展「踊るサテュロス」カタログ』(読売新聞社、2005)を参考にしつつ執筆してまいります。なので情報がちょっと古いかも またリ…

オウィディウス『変身物語』

オウィディウスによる『変身物語』をご紹介いたします。 原著は紀元後8年の作で全15巻。「変身」という事象を軸に250もの物語が収められた、ギリシャ神話の集大成とも言うべき書物です。 何らかのギリシャ神話関連の本を読んでいて、出典に「Ovid, Met.」と…

イスタンブールの初期キリスト教会の遺跡にて、破損したパーン像が発掘

2023年6月1日イスタンブールにて、1700年ほど前に作られたとされる我らが牧神パーンの像が発掘されました。大変めでたいことです。 せっかくなのでそれを取り上げている海外ニュースを訳しておこうと思います。いつものようにグーグル翻訳に毛が生えたレベル…

オルペウス讃歌-シレノス、サテュロスとバッケー讃歌(AthanassakisとWolkowによる)

パーン讃歌に引き続き、今度はオルペウス讃歌第54番の「シレノス、サテュロスとバッケー讃歌」をざっと読みたいと思います。"The Orphic Hyms"(Apostolos N. Athanassakis and Benjamin M. Wolkow, Johns Hopkins University Press, 2013)という本が原本です…

オルペウス讃歌-パーン讃歌(AthanassakisとWolkowによる)

以前行き当たりばったりなオルペウス讃歌に関する記事を書きましたが、 satyrshouse.hatenablog.com こちらに出てきた「Apostolos Athanassakisによる新訳」を運良く入手しましたので、パーン讃歌からざっと見ていきたいと思います。 "The Orphic Hyms"(Apos…

サテュロスとパーンの違い、見分け方について

昔こうしたページを作ったことがあったんですが、散漫な読書案内という感じであんまり役に立たないように思われるので、改めて「サテュロスとパーン(パン)の違い」について書いてみようかと思います。 わたくし自身の考えは「むやみに見分けようとしなくて…

ピンダロス

西洋古典叢書シリーズが続きますが、今回もそちらからピンダロスの『祝勝歌集/断片選 西洋古典叢書 第Ⅱ期第13回配本』(ピンダロス、内田次信訳、2001、京都大学学術出版会)をご紹介いたします。 www.kyoto-up.or.jp ピンダロスは紀元前6〜5世紀のギリシャ…

ウェルギリウス 牧歌/農耕詩

テオクリトスに続きまして、今度はウェルギリウスの『牧歌/農耕詩 西洋古典叢書 第Ⅲ期第3回配本』(ウェルギリウス、小川正廣訳、京都大学学術出版会、2004)をご紹介いたします。 今回も公式ページへのリンクをば www.kyoto-up.or.jp ウェルギリウスは紀元…

オルペウス讃歌-Thomas Taylorによる注釈を主に

今回は自分でもいまいちわかっていない話なのでメモ程度に。 古代ギリシャには「オルペウス教(オルフェウス教)」と呼ばれる宗教があったといいます。 オルペウス教は伝説の詩人オルペウスを開祖とする宗教であり、紀元前7〜6世紀ごろから普及したとされま…

テオクリトス 牧歌

『牧歌 西洋古典叢書 第Ⅲ記第7回配本』(テオクリトス、古澤ゆう子訳、京都大学学術出版会、2004)をご紹介いたします。 でかい本屋に行けばたいがいズラっと並んでいる西洋古典叢書のうちの1冊です。新しめの本なので図書館にもあると思います。 せっかくな…

Song of Pan

かつてiOSとAndroid向けに配信されていた無料ゲーム、Thumbspire社とBalzo社による「Song of Pan」(2015)をご紹介いたします。Thumbspire社が配信担当でBalzo社が開発担当かな? とりあえずトレーラー www.youtube.com あと開発元Balzoのページ(もうリンク…

ブラック・ミュージック

ウィリアム・フォークナーによる短編小説「ブラック・ミュージック」をご紹介します。 テキストは『フォークナー全集10 医師マーティーノ、他』(瀧川元男 訳、冨山房、1971)によります。小説自体が発表されたのは1920年代半ばだそうです。 フォークナーと…

アポロドーロス『ギリシア神話』(ビブリオテーケー)

アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波書店、1998)をご紹介します。 原著は1世紀から2世紀の作、岩波文庫版は初版が1953年とのことです。私が持っているのは第65刷。 ド定番なので大概の図書館にあるでしょうし本屋にも大概あるでしょう。なか…

バウドリーノ

ウンベルト・エーコによる小説『バウドリーノ』(堤康徳訳、岩波書店、2017)をご紹介いたします。原著"BAUDOLINO"は2000年刊。 作者ウンベルト・エーコはイタリアの小説家、エッセイスト、文芸評論家、哲学者、記号学者とのこと。多い。『薔薇の名前』が有…

ほこりまみれの兄弟

ローズマリー・サトクリフによる小説『ほこりまみれの兄弟』(乾侑美子訳、評論社、2000)をご紹介します。 原著"Brother dusty-feet"は1952年の作です。 作者サトクリフは20世紀イギリスの歴史小説の大家。私はアーサー王伝説の再話の人として名前だけ知って…

サテュロス劇とは何か

中務哲郎による「サテュロス劇とは何か」をご紹介いたします。 テキストは『ギリシア悲劇全集別巻 第十二回配本(全十三巻・別巻1)』(岩波書店、1992)にあります。 全体がギリシア悲劇を読み解くに際し役に立つ知識で固められた一冊ですが、その中にサテ…

芝刈り機の男

ウィキペディアに「大衆文化のパーン」というありがたいにも程があるページがあり、ここを参考にネタを探るのもいいなと思いました。 Pan in popular culture - Wikipedia というわけで今回はそこから、スティーブン・キングによる短編小説「芝刈り機の男」…

アミンタ

トルクァート・タッソによる牧歌劇「アミンタ」をご紹介します。 テキストは『愛神の戯れ』(トルクァート・タッソ著、鷲平京子訳、岩波書店、1987年)で読めます。 岩波文庫に強い感じの古本屋やデカめの古本市などに行けば見つかるんじゃないかと。 「アミ…

人間嫌い

メナンドロスによる喜劇「人間嫌い」のご紹介です。 テキストは『ギリシア喜劇全集5』(訳者:西村太良、川上穣、吉武純夫、広川直幸、平山晃司、岩波書店、2009年)で読めます。 大きめの図書館に行けばあるかもしれないし無いかもしれない。 「人間嫌い」…

牧神絵画botのこと(牧神の画像を検索するときのポイントなども)

絵画は多すぎてどうしたものかわからないので、牧神絵画botなるものの解説にてまとめてみようと思います。 ツイッターにて、牧神絵画botというアカウントを運営しています。 twitter.com いわゆる「サテュロス」とか「パーン」な人物が描かれたパブリックド…

西欧古代神話図像大鑑

カルターリ『西欧古代神話図像大鑑』(ヴィンチェンツォ・カルターリ著、大橋喜之訳、八坂書房、2012年)をご紹介します。 最初の最初に『古人たちの神々の姿とその変容』として出版されたのは1556年のようです。それに図版が追加されたものが1571年。こちら…

たのしい川べ

ケネス・グレーアム『たのしい川べ』(ケネス・グレーアム著、石井桃子訳、岩波書店、2012年)のご紹介です。 1908年刊。こちらの岩波書店のものは1963年に初版が刊行されたようです。私が持っているのは第50刷でした。 原題は”The Wind In The Willows"とい…

パーン讃歌 / ホメーロスの諸神讃歌

「諸神讃歌」と当たり前のように言ってきましたが、そういえばそのものの情報が全くなかったので、『ホメーロスの諸神讃歌』(ホメーロス著、沓掛良彦訳注、平凡社、1990年)のご紹介です。 全体の主な説明はウィキペディアにも載っています。 ホメーロス風…

I AM PAN!

Mordicai Gersteinによる絵本、「I AM PAN!」のご紹介です。 2016年Roaring Brook Press刊(邦訳なし) ギリシャ神話のエピソードのうちパーンの登場するものをある程度まとめた絵本となっています。平易な英語で読みやすい。2019年には似たフォーマットの『…

パーンとは(Theoi Projectより)

「サテュロスとパーンなど」と名乗ってるんだからパーンの方もちゃんと書いておいた方がよかろう。というわけでサテュロスに引き続きTheoi Projectのパーンの項目(ENCICROPEDIA部分まで)の翻訳です。 長いのは仕方ないとしてもかなりお粗末な訳になってい…

YAXIN THE FAUN

『YAXIN THE FAUN』のシリーズをご紹介します。 YAXIN THE FAUNはMan Arenas(ディズニーのスタッフだったりもするアートディレクターの方)による作品群です。漫画、絵本、イラストなどの形態がありますが、「グラフィックノベル」と書かれていることが多い…