パーン讃歌 / ホメーロスの諸神讃歌
「諸神讃歌」と当たり前のように言ってきましたが、そういえばそのものの情報が全くなかったので、『ホメーロスの諸神讃歌』(ホメーロス著、沓掛良彦訳注、平凡社、1990年)のご紹介です。
全体の主な説明はウィキペディアにも載っています。
韻律や方言がホメーロスと同じものが使われている古い讃歌集。ホメーロスが書いたわけではない。
「原典」なるものがタマネギ状でむいてもむいても辿り着けないギリシャ神話ですが、この諸神讃歌に関しては「原典」と言って差し支えないものと思われます。とりあえず押さえておきたい一冊です。
なかなか本屋で見つけるのは難しい本と思われますが、大きめの図書館に行けばまあまあ置いてあると思います。全訳はこの平凡社のもののほかちくま学芸文庫からも出ています。
パーン讃歌は331ページより始まり、前半は野山を駆け回りニンフと戯れるパーンの情景、後半はパーンの誕生の神話が語られるものです。
改めて読んでみると少年性がすごいですね。前半なんて特にブラッドベリの小説のようです。(逆?)
讃歌からわかることは
・パーンは山羊の脚と二本の角を持った神である
・パーンは野山と狩と音楽の神である
・パーンはニンフたちのなかよしさんである
・パーンはヘルメースとドリュオプスの娘との間の息子である(「ドリュオプスの娘」が「柏の木(ドリュオプス)のニンフ」なのか「ドリュオプスという名の男の娘」なのかは不明)
・ドリュオプスの娘はパーンの容姿に驚き逃げてしまったが、ヘルメースは生まれたてのパーンを気に入って他の神々に紹介しその誕生を喜んだ
といったところです。
後半の誕生エピソードが何らかの文献に登場したら「諸神讃歌からの引用だな」と思いましょう。
脚注・解題も情報の宝庫です。
讃歌から解題まで全部含めても見開きで5枚程度で済むので、見つけたらコピーを取っておくことをおすすめいたします。私は取りました。