アポロドーロス『ギリシア神話』(ビブリオテーケー)
アポロドーロス『ギリシア神話』(高津春繁訳、岩波書店、1998)をご紹介します。
原著は1世紀から2世紀の作、岩波文庫版は初版が1953年とのことです。私が持っているのは第65刷。
ド定番なので大概の図書館にあるでしょうし本屋にも大概あるでしょう。なかったらごめん。
簡潔なタイトルゆえ多くの人が入門のつもりで手に取るも、物語よりも神々や英雄たちの系譜がびっちり並んだその様に気圧されて本棚の肥やしとしてしまうことでおなじみ(多分)。ギリシャ神話をかじった人は「アポロドーロス」や原題の「ビブリオテーケー」と呼ぶ本です。私もだいたいビブリオテーケーって呼んでるかな。
アポロドーロスという人は複数人いたそうですが、ギリシャ神話の文脈で「アポロドーロス」という名前が出たらだいたいこのビブリオテーケーのことと思って良いでしょう。
特徴としては「ローマ時代の作なのにローマらしくない」とのこと。オウィディウスの『変身物語』のようなローマらしい情感は排してあくまでドライに、系譜をメインに神話を語っているのだそうです。
そのへんの話は訳者の高津先生によるまえがきがかなり面白いのでぜひご一読ください。
そんなビブリオテーケーですが、パーンの記述もサテュロスの記述も大変少なくなっております。なんでよ。ホメロスが語ってない存在だからかな。それか「系譜」としてはあんまり名前が出てこないとか?
とにかく少ないからには丸暗記しちゃいましょう。
まずはパーンの話から
・第一巻Ⅳ-1の「パーン」
ゼウスとヒュブリスの子とされ、アポローンに予言の術を授けたそうです。
同じ名前の神や人がいるのは珍しいことではないので、これはいわゆる牧神パーンとは別の神なのかもしれません。
・第一巻Ⅵ-3の「アイギパーン」
「アイギ〜」は「ヤギの」という意味だそうです。
テュポーンがゼウスと取っ組み合った際に奪って隠したゼウスの腱をヘルメースと共に奪い返し、ゼウスの元に戻します。
・摘要Ⅶ-39の「パーン」
ペーネロペーがヘルメースによって生んだ子とされるようです。オデュッセウスの妻ペーネロペーは夫が帰るまで貞操を守ったことで有名ですが、待ってる間にちょっかいを出された説もあるそうで、そのうちのひとつです。
つづいてサテュロス
・第一巻Ⅳ-2の「マルシュアース」
アポロドーロスはマルシュアースをサテュロスとは一言も言ってないんですが、だいたいサテュロスとされる人物なので一応。
オリュムポスの息子とされ、アテーナーが捨てた笛を拾うもアポローンとの音楽対決に敗れて皮を剥がれて死にます。負け方としては「アポローンは竪琴を逆にして演奏しマルシュアースにも同じことを要求したがマルシュアースはできなかった」とのこと。
・第二巻Ⅰ-2の「サテュロス」
アルカディアー人に害を加え、その家畜を奪っていたそうです。悪い妖怪か?全身に目がある力持ちの巨人アルゴスによって殺されました。
・第二巻Ⅰ-4の「サテュロス」
アルゴス(これは地名)に住んでいたようです。水を汲みにきた少女アミュモーネーに欲情を起こしますが、ポセイドーンが現れたので逃げていきました。
・第三巻Ⅴ-1の「サテュロス」
ディオニューソスの従者でいっぱいいます。ディオニューソスを侮辱するリュクールゴス王によって捕虜となりますが、突然解放されます。ディオニューソスのおかげだね。
わかりやすく出てくるのはそんなものです。
ちなみにセイレーノス(シレノス)はほとんど出てきません。第二巻Ⅴ-4にポロス(ヘーラクレースの毒槍に当たって死んじゃうケンタウロス)の父の名として1回出てくるだけでした。
あとゼウスがアンティオペーと交わる際にサテュロスに姿を変えた話も無し。レーダーの時にゼウスが白鳥になった話は載ってるのにな……
主に索引を見ながら探してみましたが、索引に載ってないものを取りこぼしていたらごめんなさい。あったら教えてください。